それはビール界の「地クラブ」だった。
「元々はアメリカの西海岸で始まったムーブメントなんです。アメリカはホームブリューイング(自家醸造)が法律的にOKなのですが、20年ほど前に、大手のすっきりしたビールに飽きた人たちが、もっと味わい深いビールを作ってみよう! とか、遊び心でビール作りを始めたのがクラフトビールの始まりと言われています」
こう教えてくれたのは、東京・池袋にある「PUMPクラフトビアバー」オーナーの飯島安博さん。「日本では、1994年に酒税法が改正されて地ビールブームが起こりますが、残念ながら観光地のお土産的な位置付けのものが多く、ブームはほどなくして終わります。それで淘汰されて残ったメーカーや、新たに参入してきたメーカーが作る個性的なビールが、今すごく評価されているんです」
日本の大手メーカーが作るビールは、ほとんどがスッキリした味わいが特徴のピルスナータイプ。それに対して、クラフトビールは苦味の強い「IPA」や小麦を使う「ヴァイツェン」、黒ビールの「スタウト」など、種類・製法も様々で、一味違う個性的な味わいを楽しめるのが最大の魅力。
【一杯目】種類は大手と同じ「ピルスナー」。だけど味わいは全っ然ちがう!
飯島オーナーが、百聞は一見ならぬ「一飲」にしかずと出してくれたのが、こちら。
「広島県の呉ビールさんのピルスナーです。ピルスナーとは、軟水とラガー酵母を組み合わせて作られたビールのこと。大手のビールと同じタイプですが、パッションフルーツとか柑橘類を思わせる、果実の風味を感じられると思いますよ」(飯島オーナー)
というわけで、飲んでみるとたしかにおっしゃる通り。飲みやすさやのどごしの爽やかさは、普段飲んでる生ビールと同じだが、その後に来る風味がこれはもうまるっきり違う。香りも違う。オーナーの言う通り、まず感じるのは柑橘系のフルーティさだ。
「使うモルトやホップなどの原材料によって、同じピルスナーでも味わいはまったく変わるんです。ここでいかに個性を出すかが、クラフトビールの面白さですね」と飯島オーナー。ゴルフには大手メーカーが作らない、尖った性能で勝負する「地クラブ(最近ではカスタムクラブという呼び名も)」があるが、まさにこれはビール界の地クラブ。地クラブの世界も奥が深いが、クラフトビールの世界もかなり奥が深そうだ。(続く)