読んだことはなくとも、マキャベリの「君主論」の存在は、多くの人がなんとな~く知っているだろう。現代にも通ずるリーダー論が説かれているみたいだし、岩波文庫から出版されてもいるが、読むにはちょっと正直ハードルが高い。そう思う人には今回読んでみた『マンガで伝授 課長のための「君主論」』がオススメだ。
その内容は、中堅お菓子メーカーで課長に抜擢された主人公が、外資系企業から転職してきた敏腕取締役の教えで「君主論」を学び、リーダーとして成長していく、というもの。そこで説かれるマキャベリの教えは、以下のようなものだ。
部下に対してどう振る舞うべきか
愛されるより、恐れられるほうがはるかに安全だ
警戒すべきは、侮られることと憎まれること
人間は些細な危害には復讐しようとするが、大きな危害には復讐できない
部下とのコミュニケーションは難しいもの。厳しくし過ぎてもダメ、甘やかしすぎてもダメだが、マキャベリは恐れられるほうが「安全」だと断ずる。超現代語訳するならば、「部下にナメられたらおしまい」というわけだ。うーむ、納得。
いかにして組織や会社を強くするか
結果さえ良ければ、手段は常に正当化される
「傭兵軍」や「援軍」は、いざと言う時に役に立たない
君主たる者、ケチだという評判を恐れてはならない
本書では、「外注先」を「傭兵軍」と同義とみなし、「要するに他社」だと断ずる。いざと言う時に
頼れない他社よりも、自社の社員を訓練し、強くすべきだという主張。たしかに、なんでもかんでも外注、外注だと、いざって時に困る。これも納得。
人望を築くには
危害を加えられると思っていた人から恩恵を受けるとよりいっそうの恩義を感じる
君主は実力のある者を愛し、一芸にひいでた者を賞賛せよ
君主は常に人の意見を聞かなくてはならないが、それは他人が言いたい時ではなく、自分が聞きたい時だ
とくに最後の言葉は胸に響く。「上司は部下の話をよく聞くべき」は一般論だが、「部下が言いたい時」ではなく「自分が聞きたい時」に聞くべきなのだ。深く納得。
課長だけに読ませるのはもったいない
以上のようなマキャベリの思想が、「お菓子メーカーの新商品開発と、経営陣のお家騒動」という、実に持って身近な例で語られるため、内容がどんどん頭に入ってくる。課長だけに読ませるのはもったいない。部長も役員も、いや、君主に“統治”される側の平社員こそ、読むべき一冊かも。