2016年2月以降、腰痛のためPGAツアーを離脱していた石川遼が、国内ツアー復帰2戦目のRIZAP KBCオーガスタで復活優勝を遂げると、翌週も2位タイと好調を維持。これは“完全復活”なのか? 石川遼の「現在地点」を探った。

「もちろん復活と言っていいと思います」と語るのは、今年はツアーでも戦う中井学プロ。「腰の怪我から本格的に復帰してすぐ優勝。翌週のフジサンケイクラシックでも2位タイという結果は、掛け値なしで素晴らしいと言えます。ただ、今回の復活には、良かった点と、課題を残した点、両方があったと思います」

【復帰の成果】カラダの状態にあったクラブセッティング

「石川選手はスポット的に復帰した7月の日本プロの時と比べると、ドライバーもアイアンも“カラダにやさしい”モデルに変更しています。例えばドライバーなら70グラム台のシャフトから、60グラム台のツアーAD TPに。アイアンも硬さを抑えた“モーダス3”に変更しています」

昨年12月にの「日本シリーズ」では90グラム台のシャフトを使っていた石川だが、60グラム台と負担の少ない重量をチョイス

「石川選手は、今までどちらかというと“強く振らないと真っすぐ飛ばないクラブ”を好んでいましたが、怪我の功名なのかどうか、今回のクラブは“9割のチカラで真っすぐ飛ぶ”という印象です。このクラブ選択は正しかったと思います」

優勝したKBCオーガスタで石川が使用したキャロウェイの「XR16SUB ZERO」ドライバー。残念ながら、日本未発売モデル

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最大の武器は「150ヤード以下」最大の課題は「150ヤード以上」

「石川選手の武器はグリーン周りにあります。アプローチとパターが本当に上手い。そして、それ以上にすごいと思うのが、150ヤード以下での“縦の距離感”です。ピッチングウェッジや9番アイアンを打たせたら、彼は本当に上手いんです」(中井)

150ヤード以下のショットでの「縦の距離感」は掛け値なしのワールドクラスだ

この中井プロの発言はデータが証明している。下に挙げるのは2016年のPGAツアーの「アプローチフロム」のデータ。残り距離ごとに「打ったボールとカップまでの平均距離」を表した数字だ。松山英樹と比較してみるとよくわかるが、石川は「100-125Y」「125-150Y」のレンジでは松山よりも平均して近くに寄せているが、距離が長くなると松山よりも精度が落ちている(石川は参考記録)。

100-125Y 13フィート(石川) 18フィート11インチ(松山)
125-150Y 20フィート7インチ(石川) 21フィート7インチ(松山)
150-175Y 31フィート7インチ(石川) 25フィート6インチ(松山)
175-200Y 34フィート4インチ(石川) 29フィート6インチ (松山)

「日本のコースの場合、石川選手の飛距離だとドライバーが当たれば残りは150ヤード以下というケースが多くなります。これは石川選手のいわばもっとも“得意なカタチ”。それに対してPGAツアーだと、同じ飛距離を飛ばしても150〜200ヤードの距離が残る場合が多くなります。番手で言えば5番アイアン、6番アイアンを持たされる距離。そこからグリーンで止まる球が打てるかどうかが、日本ツアーで復活したように、アメリカでも活躍できるかどうかの分かれ目だと思います」

PGAツアー優勝、その先のメジャー優勝を目指すには?

中井プロによれば、日本ツアーとPGAツアーの違いは、我々アマチュアゴルファーがレギュラーティからプレーする場合と、バックティからプレーする場合の違いをイメージするといいという。バックティから回れば、当然ながらセカンドで長い番手を持たされる。そのときにゴルファーが考える選択肢はふたつ。あなたならどうするか、ちょっと考えてみてほしい。

セカンドで長い番手ばっかり持たされる! あなたならどうする?

今までの石川は前者を志向していた印象。それを後者にすることがPGAツアーでの成功のカギを握るのではないかと中井プロは言う。石川遼は見事に復活した。次は、世界の舞台で大暴れするリョー・イシカワが見たいと思うのは、決して贅沢な願いではないはずだ。