全米プロが盛り上がる影で、ひっそりと、しかしゴルフ史に燦然と輝く偉大な記録が達成された。舞台はPGAツアーの二部ツアーであるウェブドットコムツアー。二部ツアー賞金ランク102位、世界ランク958位の無名のドイツ人ゴルファーが、初日「58」4日間「250」の超絶スコアをたたき出した。

それはタイガー・ウッズですらたどり着いたことのない領域

「250」と言われて、どんなスコアか一瞬で理解できたらあなたは競技ゴルファーか、かなりのゴルフマニアだ。たとえば一般のゴルフ場は大抵パー72。それに4をかけると288となる。288は、今回ステファン・イェーガーが達成したスコアより「38打」悪いスコアだ。

ステファン・イェーガー。好きな映画は「トランスフォーマー」。いや、そんなことはどうでもいい。1989年生まれ、2006年に交換留学生としてアメリカに渡ったドイツ人は、2012年にプロ転向後、二部ツアーでも結果が出せていなかった。それが突然大爆発するのだからゴルフは面白い。

奇跡の一週間は初日の「58」から始まった

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スコアは58はウェブドットコムツアーの歴史上初となるスコア。日本人では2010年の中日クラウンズで石川遼が、丸山茂樹が2000年の全米オープン予選で達成したことがある「世界最小スコア」だ。イェーガーのコメントは「こういうスコアって、滅多に出るもんじゃないよね」である。うん、そりゃそうだ。

伝説継続。二日目「65」。トータル「123」でツアー記録更新

アベレージゴルファーがスコア「123」を叩いてしまったらショックでしばらくゴルフ場に行けないかもしれないが、それが2日間のトータルスコアだったらこれは文句なく偉業だ。イェーガーは「58」を出した翌日を「65」でまとめ、トータル「123」とし、ウェブドットコムツアーの2日間の最小スコア記録「124」を更新した。

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まだまだ行くぞ! 3日目「64」

イェーガーの伝説は続く。3日目は「64」とし、3日間のトータルスコアは「187」。これはウェブドットコムツアーのみならず、PGAツアーを含めても3日間の最小スコアとなった。

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ちなみにイェーガーが大記録を達成したエリー・メイクラシックはパー70の設定。なので3日間トータル187は23アンダーということで、上の写真は右手が2、左手が3、両手合わせて「23」でハイポーズ。なんか緊張感が伝わってこないんですけど……。

そして伝説へ。記録を4打更新する、最終日「63」

イェーガーの奇跡は止まらない。最終日も「63」のビッグスコアを叩き出し、見事優勝。トータル「250」は、PGAツアー、ウェブドットコムツアー、そしてシニアツアーであるチャンピオンズを通じての4日間最小ストロークだ。

ちなみに過去の記録保持者はトミー・アーマー三世:254(2003年、テキサスオープン)。参考までに、ミケルソンとタイガーは以下のような記録を持っている。いかに今回のイェーガーのスコアが凄まじいか、理解しやすくなるだろう。
フィル・ミケルソン:256(2013年、フェニックスオープン)
タイガー・ウッズ:257(2007年、ツアー選手権)

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もうひとつの伝説。使ったのは友達から借りた「50年物のアンサー」

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イェーガーが4日間手にしていたのは、友達のクローゼットから発見した、50年前のピンのブロンズ製アンサーパター。骨董品と言っていいパターだ。まったくの無名プロが、50年前のパターを手にした週に歴史的大記録で優勝。なんだか出来のよくない漫画のストーリーみたいだ。だが現実だ。これがゴルフ、なのだ。