飛ばしの専門家として名高いプロゴルファー、吉田一尊プロ。彼はまた、カスタムドライバー「グランディスタ」の設計も手がけている。吉田プロによれば、「設計してみてはじめてわかった、飛ぶドライバーの条件」があるという。新モデル「グランディスタLS-001」を発表したばかりの吉田プロに、大いに語ってもらおう。

ドライバーの設計は「あちらを立てればこちらが立たず」

「ドライバーの設計は、あちらを立てればこちらが立たず、ばかり起こります。たとえば重心距離(シャフト軸線からフェース面までの距離)は長いほど飛びますが、そうするとヘッドはターンしにくくなります。それを補うにはフックフェース(フェースを左に向ける)のがいちばんカンタンな方法なのですが、ゴルファーの多くはフックフェースは構えにくく感じるため、実際はあまり意味がありません」

グランディスタLS-001のヘッドを上から見た図。構えやすさを重視して、重心距離は長いがフックフェースではない

「そこでどうするか。重心距離を長くして、なおかつボールがつかまるようにするには、あとは重心を深くする(ヘッド後方に重心を移す)しかありません。ただ、ここで問題。重心を深くすると、今度はスピンが増えてしまうんです。スピンが増えると、基本的には飛距離は伸ばせません」

スピンを減らすための「ウェート」プラス、シャローフェース

「ではどうするか。残された手は、重心を低くして、スピン量を減らすしかありません。重心を低くするとなぜ飛ぶのかといえば、フェース面上の重心より上の部分(有効打点)で打ちやすくなるからです。有効打点でインパクトすると、スピン量を減らす作用(ギア効果)が起こり、結果としてスピンが減るんですね」

赤点で示したのがグランディスタLS-001の重心イメージ。ここより上が「有効打点」

「重心距離を長くすることで飛距離を伸ばし、重心を深くすることでつかまりを良くし、重心を低くすることでスピン量を減らす。では、それをどのように実現するかです。今回のドライバーでは、ソールの9カ所に重さの異なるウェートを配置し、なおかつクラウン(ヘッド上部)をチタンではなくカーボンいすることで、徹底的に低重心化を図りました。また、フェースをシャロー(薄い)にしたのも大きな特徴です」

「普通、シャローフェースは有効打点が短くなります。フェースが薄いのだから当然です。ディープ(厚い)フェースにすれば有効打点は長くなる。しかし、ディープフェースはスウィング中に手元が浮きやすく、結果的にフェース下部に当たりやすくなってしまうんです。なおかつ、シャローフェースは投影面積が大きくなり、見た目に安心感があるというメリットもあります」

ソールに配された9つのウェート。これにより、低重心化を図った

こちらがスペック表。重心の数字ひとつひとつに意味があるのだ

いかがだっただろうか。1本のドライバーを世に出すまでには、様々な試行錯誤があるのだ。吉田プロのクラブ作りが面白いのは、ドライバーという「物体」の設計に加えて、ゴルファーの「スウィング」そして「生理」までをも設計に取り入れているという点だ。

そんな吉田プロの飛ばしのレッスンは、後日シリーズで記事化予定。お楽しみに!

※LS-001は2016年7月末発売予定