歴史に名を刻んだ名手たちは、必ず後の世に名言を残している。もしかしたらたった一言で僕らのゴルフ観を変えてしまうかもしれない。そんな言葉を、探しに行こう。

もっとも“誤訳”された名言

「テイク・デッド・エイム(Take dead aim)」
ハーヴィー・ペニック

全米女子オープンのプレーオフに臨むに際し、ベッツィー・ロールズは師匠のハーヴィ・ペニックに電話をかけた。ペニックはこう助言した「テイク・デッド・エイム(Take dead aim)」。

この言葉は、しばしば「死ぬ気で狙え」と訳されてきたが、実際は違う。dead(デッド)というと、すなわち「死」という言葉が頭に浮かぶ。しかしデッドには「まったくの」とか「完全な」といった意味もある。

ペニックの意図は、「aim(狙い)にだけ完全に集中しなさい」ということ。ターゲットを絞ったら、そのことだけを脳裏にとどめ、余計なことはすべて排除する。それを一打一打、愚直に繰り返す。ひとたびボールにアドレスしたら、そのボールを打つこと以上に重要なことは人生にないのだ。

簡単そうで難しいことかもしれない。しかし、我々アマチュアゴルファーでも、明日から実践できる基本中の基本とも言えそうだ(このアドバイスを受けたベッツィー・ロールズは全米女子オープンに勝った)。

ベン・クレンショー(右)、トム・カイト(左)、ふたりのメジャーチャンピオンを育てた

ハーヴィー・ペニック(1904〜1995)